
〈収録作〉(随筆含む)
「信仰」「生存」「土脉潤起」「彼らの惑星へ帰っていくこと」「カルチャーショック」「気持ちよさという罪」「書かなかった小説」「最後の展覧会」「無害ないきもの」「残雪」「いかり」
表題作は2021年シャーリィ・ジャクスン賞(中編小説部門)候補作
帯の軽々しいセリフが気になり購入した。
けど、そんなもんじゃなかった。
どの短編もぶっとんでいる。
私達の日常と同じ舞台かなと読み進めていると、
どんどん違う世界が露になっていく。
これは純文学であり、SFだと感じた。
今年読んだ中で一番の傑作でした。
書評ではありますが、なるべくネタバレにならない様に
読みたくなるあらすじ解説を目標にしています。
また、すべての作品の解説ではありません。
信仰(表題作)/村田沙耶香
『なあ、永岡、俺と、新しくカルト始めない?』
と軽薄な言葉での勧誘から始まる表題作。
マルチ商法などの詐欺まがいな勧誘かと思いきや
根っこからカルト商法を始めようという様な
無謀とも言える、同級生の石毛からの頓珍漢な誘いだった。
断ろうと思うも、石毛の協力者として
大人しくて真面目な斉川さんが巻き込まれていた。
人の言う信仰とは何なのだろうか。
どこかコンビニ人間にも似たような不可解な日常が描かれている。
日常の中の狂気にあふれた作品だと思う。
生存/村田沙耶香
この短編集を読んだ中で一番ぞっとしました。
65歳になった時の生存率をA~Dで評価される世界。
子供の頃から大人になっても、この生存率は重視され
それによって就職先なども変化し、
世間の評価まで決まってゆく。
生存率Aの男性と結婚している鈴木クミの生存率はCだった。
生存率Dまで落ちてしまった場合、人はーー。
この作品、15ページ程で短いですが本当に面白かったです。
私達の世界の延長上なのかなと思いきや
とんでもない世界が待ち受けています。
ぶっ飛んでいて好きです。
土脉潤起(どちゃくうるおいおこる)/村田沙耶香
「生存」の世界と繋がりを感じさせる作品。
おそらく同じ世界での出来事なのだろうと思う。
人の冷たさと温もりが混同した様な作品。
暖かいと感じても、すぐそこには冷たさが佇んでいる。
そんな心持となった。
彼らの惑星へ帰っていくこと/村田沙耶香
5ページほどのショートショート。
でも、はっとさせられる物語。
人なら誰しもが持つ悩みの誰かの答。
逃避行は千差万別なのかもしれない。
カルチャーショック/村田沙耶香
こちらも数ページのショート。
村田沙耶香さんはこんなにも
様々な世界を生み出せるのだなと感心してしまった。
どの作品も読みやすく、文学として不快な所も一切ない。
その上で、こんなにもアイデアに富んでいる。
嫉妬をも覚えかねない。すばらしい作家であると感じた。
書かなかった小説/村田沙耶香
これまた近未来的なテーマの短編。
冒頭からいきなり
『家電に詳しい友達に強く勧められ、自分のクローンを買うことにした。』
と始まるわけですよ。
クローンが家電!?
世界観の玉手箱やぁ!
などと言ってみたくもなるもんですよ。
この話で気になるのはところどころに
[シーン14]と冒頭にあったり
[シーン28]など
場面が切り替わるタイミングで添えられているんです。
冒頭が[シーン14]から始まるんです。
そう。
つまり…。(ややネタバレになるかも)
つまりこれ、初めから主人公は何かしらクローンなのではないか?
とも考えられます。
実際にどういう意図なのかは
検討の余地がありますが、
こういう仕掛けも読書の楽しみのひとつですよね。
最後の展覧会/村田沙耶香
完全にSFです。
誰がなんといおうと。
宇宙の中の地球といったテーマの短編。
一見、悲しみとも取れる光景は
ひとつの芸術品として語られる…。
素敵な宇宙の膨大な規模の芸術…。
いや~これはSF好きの方には
是非とも読んでいただきたいですね。
とても美しい作品でした。
無害ないきもの/村田沙耶香
『私は、空が嫌いです。』
と冒頭から嫌な予感が胸をよぎります。
何故、空が嫌いなのか…?
30ページにも満たない短編に
思わぬ伏線が…。
村田沙耶香氏…私は脱帽です。
素晴らしき文学センス。
素晴らしきストーリーテラー。
ちなみにこの話もSF的な匂いがぷんぷんしています。
どこか恐ろしい話です。
すんごいなこの短編集。
世界観がすごすぎる。
残雪/村田沙耶香
いやもう。
ぶっ飛びの極致。
ここに極まれり。
とにかく読んでください。
6ページにも満たないショートです。
身も蓋もない事ですが
超ショート作品をあらすじみたく
紹介しても仕方ないので
とにかく読んでみて欲しい一作です。
もうほんとに楽しい。
読書ってこんなにも楽しいんだ。
おわりに
ここまでお読み頂きありがとうございます。
ほんとうに素晴らしい短編集、作品でした。
純文学としての骨格を残しつつ
SF的なストーリーを楽しむ。
2025年読んだ小説の中で最も素晴らしかったと思います。
私なんぞが評価するのもおこがましいと感じてしまいます。
みなさまも是非。
まとめ

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